将来の長寿世界一はスペイン?!「地中海食」の健康効果と「和食」との共通点/スペイン旅行の食日記③

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「地中海食」とは

スペイン旅行の楽しみの1つだったのが、現地での食事。スペインをはじめ、イタリア、ギリシャなど地中海に面した国々の食事は「地中海食(地中海式食事法)」と呼ばれ、健康的な食事法として世界的に脚光を浴びています。

パエリア、タパス、ガスパチョ、アヒージョなどスペイン料理は日本でも食べられますが、もっと素朴な現地の味や食スタイルは気になっていました。

心身ともに健康を導き、長寿やダイエットにも効果があるといわれる地中海食とはどういったもので、どのような効果があるのか。ツアー中の食事とあって食べるものは限られましたが、実食の感想を加えながらお伝えします。

「地中海式ダイエットピラミッド」

地中海食は、地中海地域の伝統的な料理として2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されたことで注目されました(和食は2013年に登録)。全粒穀物、豆、野菜、果物、乳製品、魚介類、ナッツを多く食べ、オリーブオイルを使い、肉類(特に牛肉)や加工食品は控えめという食スタイルです。

実は1950年代から、地中海食について様々な研究が行われており、1993年にアメリカのNPO法人オールドウェイズがWHO(世界保健機構)とハーバード大学公衆衛生大学院の専門家と協力して作ったのが、「地中海式ダイエットピラミッド」という図です。何をどれだけ食べたらよいかを視覚的に示したもので、三角形の頂点にある食品はたまに食べる程度、下にいくほど多く食べるようにという図になっています。

オールドウェイズがWHOとハーバード大学公衆衛生大学院の専門家と協力して作った「地中海式ダイエットピラミッド」(OLDWAYS HPより)
オールドウェイズがWHOとハーバード大学公衆衛生大学院の専門家と協力して作った「地中海式ダイエットピラミッド」(OLDWAYS HPより)
頻度       食品や項目                            
月に数回牛肉や豚肉、お菓子やケーキなどのデザート
週に数回鶏肉、卵、チーズ、ヨーグルト
週に2回以上魚、シーフード
毎食野菜、果物、全粒粉、オリーブオイル、豆、ナッツ類、マメ科植物および種子、ハーブやスパイス
毎日運動、誰かと一緒に食事をする
適度赤ワインを飲む
毎日水を飲む

「地中海式ダイエットピラミッド」とありますが、この“ダイエット”は「やせる」ではなく「健康を保つ」という広義の意味です。とはいえ、実際にダイエットにも効果があるとされており、U.S. News & World Report誌の最も優れたダイエット法に、2018年から7年連続で選ばれています。

食卓に必ずオリーブオイル

現地での食事で1日3食どの食卓にも置いてあったのが、オリーブオイルと塩、コショウ、時々酢(ビネガー)。日本だと、醤油、塩、コショウが置いてあるのと同じ感覚で、「オリーブオイルの消費量は半端ない」と思いました。

また思い返すと、1回も牛肉は食べませんでした。チキンは食べましたが、豚肉はあったかどうか…ソーセージやハムは食べたものの印象には残っていません。

その代わり魚介類は多かった。パエリアも魚介類とイカ墨でしたし、2日目のランチのメインは、何という名前か忘れましたが、「白身の細長い魚の輪切り!」で、ウニ風味のソース(ウニじゃないかもしれませんが、ほのかに磯の香り)。パンは基本的にはパサパサの全粒粉。おすすめのドリンクは赤ワインという形でした。

地中海食に期待される効果

地中海食に期待される主な効果について、過去にアスレシピで紹介した「長寿国世界一はスペイン?!体にも脳にも良い“地中海食”の健康効果に注目」の記事なども参考にお伝えしていきましょう。

長寿(生活習慣病予防)

2023年にWHOが発表した世界の平均寿命ランキングは、日本が84.3歳で1位(男性=81.5歳で2位、女性=86.9歳で1位)でスペインは5位でしたが、2018年にはアメリカの研究機関が「2040年までに長寿世界一はスペインになる」と権威ある英医学誌「ランセット」で発表しています。

地中海食は生活習慣病の予防・改善に効果があるとされ、特に高血圧、動脈硬化、心疾患、脳梗塞や糖尿病などのリスクが少ないことから、これから長生きする人が多くなるという見解です。

地中海食を食べているの長生きするという理由は次の通り。

  • たくさん使うオリーブオイルが不飽和脂肪酸を多く含んでいること
  • 飽和脂肪酸を多く含む肉の摂取量が少ないこと
  • 野菜や果物などの植物性の食品を多く摂取するために抗酸化作用が強いこと

ダイエット

長生きのポイントとなるオリーブオイルは、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を抑制するオレイン酸が主体で、脂肪の蓄積を抑えることのできる「太りにくい油」とも言われています。また、強い抗酸化力のあるポリフェノール類や、血流を促進し、血管の老化の抑制、アンチエイジング効果があるビタミンEも豊富です。

スペイン滞在中、肥満というか特段太った人は見かけませんでした。あれだけたくさん食べて、アルコールもたくさん飲む割には肥満がいないというのは、確かに地中海食のおかげなのかもしれません。

とはいえ、オリーブオイルも油です。摂りすぎれば当然、太るので要注意!!

スペイン人は、オイルだけでなくオリーブの実もブラックとグリーンともによく食べているので、それ自体にも健康効果があるのではないかと思っています。オリーブの実の塩漬けがマジで美味でした。オリーブの実には食物繊維も多いので便秘予防にも役立つそうです。

ちなみにスペイン中部は荒野で、野菜などの農作物の栽培には適していません。車窓から見える景色は、割と適当に植えられたオリーブとブドウの畑。これが長時間続きます。

アンダルシア地方の赤土の大地にはオリーブ畑が延々と続いていました

うつ病抑制

地中海食は、うつ病への効果が認められたという論文も発表されています。報告書によると、地中海式に近い食事をとる人は、全くかけ離れた食事を取る人に比べて、うつ病発生のリスクが約3分の1になるというものです。理由は次の通り。

  • 砂糖や牛肉などに含まれる飽和脂肪といった炎症性成分をほとんど摂らない
  • 抗炎症・抗酸化作用のある野菜や果物、ナッツを多く摂取することで脳を酸化ストレスや炎症から守る
  • 脳の細胞の構造と透過性を助ける効果があり、特に、DHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸を含む魚介類を多く食べていることで、うつ病との関わりが高い海馬を保護する役目がある
  • 野菜中心の食事は腸内環境を整え、脳や精神的に良い影響を与える物質を体内で増やす

2018年に出版されて話題になった書籍に「Brain Food: The Surprising Science of Eating for Cognitive Power(和訳:ブレインフード:認知能力に関する食事の驚くべき科学)」があります。5つあるブレインフードの1つとしてオリーブオイルを挙げており、このほかにもオリーブオイルをたくさん使う地中海食は、アルツハイマー型認知症リスクを下げるのに効果的とも考える専門家もいます(効果が見られなかったという研究報告もあり)。

スペイン人のうつ病発生率が多いのか少ないのかはわかりませんが、もし少ないのだとしたら食事だけでなく、気質、メンタル面も影響していると思います。

スペイン人はとにかく陽気でおしゃべり。世話好きで親切な方も多かった。

現地に長く住む日本人によると、スペイン人は、よく言えばおおらかで細かいことは気にしない(大雑把、ざっくり、アバウト)。まあ、日本人の常識からすると、理解できない部分も多いようです(笑)が、そのメンタリティというか国民性は、ある意味うらやましいですね。

和食もユネスコ無形文化遺産

さて現在、平均寿命世界1位の日本人、私たちの食事も2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。

「和食」の4つの特徴は
(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
(2)健康的な食生活を支える栄養バランス
(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現
(4)正月などの年中行事との密接な関わり

長寿の食事として、和食も世界に誇れるものです。

1975年の日本食が理想形

日本食の理想形は「1975年型」とも言われます。私が小さい頃の食事スタイルですね。

この当時の食事は、一汁三菜スタイルで、ご飯、みそ汁、主菜(主に魚など)、副菜(おひたし、あさりの酒蒸し、煮物など)、漬物といったもの。肥満の解消や悪玉コレステロールや血糖値の低下、ストレスの軽減、運動機能の向上などの効果を得られるという研究報告もあります。

1975 年型日本食は健康有益性が高いと発表した東北大のプレスリリースより
2016年に「1975 年型日本食は健康有益性が高い」と発表した東北大のプレスリリースより

「1975年型日本食」の調理法は、カロリーや脂肪を抑えるために「煮る」「蒸す」「生」を優先し、次いで「茹でる」「焼く」で、「揚げる」「炒める」は控えめにが基本。食品としては、大豆製品や魚介類、野菜(漬物を含む)、果物、海藻、きのこ、緑茶を積極的に、卵、乳製品、肉も適度に摂取。調味料はだしや発酵系調味料(醤油、味噌、酢、みりん、お酒)を上手に使用し、塩や砂糖の摂取量を抑えると良いとしています。

当時、我が家の食卓にはよく魚(焼き魚、煮魚)があがっていました。私は魚の目をほじるのが好きで、食べる前にまず、家族全員分の魚の目をほじくっていたことを覚えています。

また、サラダやお浸しやら煮物やら、野菜も食べていました。ご飯とみそ汁。だから時々のハンバーグや生姜焼きがとてもうれしく、年に数回のファミレスも楽しみだったものです。

地中海食と和食

そもそも地中海食が研究されるようになったのは、ヨーロッパでも比較的貧しい地域で暮らす南欧の人々の方が、経済的にも豊かな北欧やアメリカを抜いて長生きだったことからです。裕福な方々からすると、沽券に関わる一大事だったんでしょう。

研究の結果、肉類や加工品を多く摂る人は血液中のコレステロール値が高くなり、動脈硬化が進みやすいということ、脂肪分の多い食事をする人々は狭心症や心筋梗塞になりやすいということが分かってきました。

日本人に理想とされる1975年当時の食事も、決して裕福な食卓とは言えません。しかし、その土地で採れる野菜や果物ものを中心に、魚をとり、豆(大豆)をとり、カロリーも調味料も採りすぎないように調理するスタイルは、地中海食にも共通していることだと思います。

つまり、肉類や加工品、脂肪分の多い食事を摂りすぎないということで、心身ともにより健康になり、身体が変わってくるということです。地中海食でも和食でも、それを意識してバランス良く食べることが大切だということです。

ただ、頭ではいくらそのように意識していても、おいしい誘惑になびく自分もいます。何かと忙しくて時短・簡単が優先となり、出来合いのものやスーパー、コンビニの惣菜を購入することもよくあります。口寂しくてスイーツを片手にパソコンを打つこともあります。

もはや現代人ですから仕方ありません。それはそれでいいのです。考えすぎたら具合が悪くなるので割り切りましょう。ただ、そればかりにならないよう、あらゆるバランスをとりながら「自分を整えていく」ことが大事なんですよね。

スペインで、オリーブオイルたっぷりの地中海食をいただきながら和食に思いを馳せ、

より多く摂りたい食材は魚、大豆、野菜!

と共通点を見つけていたのでした。

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