お酒に弱い東アジア人特有の体質
お酒を飲むと、顔が赤くなる人っているじゃないですか。酒に弱い人や飲めない人がなるそうで、日本人の半分がその体質らしく、私もその1人です。
酔うよりも早く顔が赤くなるので、嫌でたまりません。顔以外なら、体の中のどこが赤くなってもいいんです。例えば、手が真っ赤とかお尻が真っ赤とか。でも、顔はやっぱり見えるところなんで気になります。
そのような体質は、日本、中国、韓国を含む東アジアの人特有のため「アジアンフラッシュ」と呼ばれており、顔が紅潮するだけでなく、頭痛や動悸などの症状が出ます。白人や黒人にはそのような体質の方はいないんだそうです。
佐賀大が研究発表「新型コロナに防御的」
顔色を変えずにお酒が飲めたらな~と、飲んべえの方たちをうらやましく思っていましたが、最近、アジアンフラッシュ体質でちょっと得した気分になった論文発表がありました。
佐賀大が報告した「お酒を飲むと顔が赤くなるアジアンフラッシュ体質が新型コロナウイルス感染症に対し防御的である」という研究発表です。
要するに、「お酒で顔が赤くなる人は新型コロナウイルスにかかりにくい」という報告です。
佐賀大の研究チームは、新型コロナが世界的に流行してからワクチンが普及するまでの間、日本は欧米諸国と比べて感染率や死亡率が低く、その要因の1つとして「アジアンフラッシュ」があるんではないかと仮説を立てました。後述しますが、アジアンフラッシュはお酒の感受性に関係する遺伝子の変異によるものなので、変異ウイルスに対し、何らかの防御特性があるのではないかということで調査を始めました。
フラッシュ体質は発症が遅く重症化リスク低い
日本人の20歳以上の男女に対し、2023年8月にインターネット上でアンケート調査を実施。「飲酒後に顔などの皮膚が赤くなるか」や「新型コロナにいつ感染したか」などの回答を807人から得て、分析しました(フラッシュ体質が445人、そうでない人が362人)。
ワクチン接種が増える前までの19年12月から21年8月までの21カ月の感染歴を比較すると、罹患率は、フラッシュ体質は35.7%で、そうでない人が40.6%。ただし、フラッシュ体質の人は発症が遅く、そうでない人に比べて「感染リスクが79%低かった」と結論付けています。感染しても入院リスクが低く(約5分の1)、重症化抑制にもなったとしています。
アセトアルデヒドの分解酵素が弱い変異型
飲酒すると、エタノールからアセトアルデヒドという二日酔いの原因にもなる物質が代謝されます。それを分解する酵素を2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)といいます。私のような酒に弱い人はALDH2の働きが弱く、ALDH2酵素が変異したrs671という変異型(アジアンフラッシュ体質)の遺伝子を持っているんだそうです。
ちなみに、日本人はALDH2酵素の活性型が56%、低活性型が40%、不活性型(完全な下戸)が4%とされていて、日本列島の中心部ほど低活性型が多いとされています。つまり、「東北の人や九州の人は酒が強い」というのは、データとしても当たっているわけです。
ほかの感染症にも防衛力がある可能性も
アジアンフラッシュ体質の人は、人類の長い歴史の中で、なんらかの感染から身を守るために遺伝子を変異させて生き延びてきたのではないかという仮説もたてられています。研究チームはフラッシュ体質の人が新型コロナウイルスだけでなく、ほかのウイルスや細菌による感染症にも防衛力が強い可能性があるのではないかとして、今後も研究を続けていきながら、そのメカニズムを解明していきたいとしています。
もちろん、ウイルスに対して無防備であっては身を守り切れませんが、この発表を知って、遺伝子的に生き抜く力が強いのであれば、お酒で顔が赤くなるぐらい、どうでもいいかなぁと思ってきました。
アジアンフラッシュ万歳!