幼稚園や保育園でもらったあれ
更年期には肝油がいい?
そんなことを目に、耳にするようになりました。
肝油といえば、幼稚園や保育園のときに1粒ずつもらったあれ、という記憶。子どもの顔がパッケージになった缶が自宅にあったという人もいるでしょう。それが更年期にどういいのか、調べてみました。
更年期とは?
「更年期」とは、閉経の5年前から5年後までの10年間を指します。「閉経前後」を定義としているので女性特有のものと思われがちですが、性ホルモンによる不調のことなので、男性にも更年期はあります。ただ、ここでは「女性」について記していきます。
閉経時期には個人差があり、40歳代前半に迎える人もいれば、50歳代後半になっても迎えない人もいます。あらかじめ時期が分かればいいのですが、そうではないので、40代に入ったら更年期の準備をするといいと言われています。
40代でも50代でも、生活する上で心身に問題がなければいいですよね。しかし、ホルモンバランスが大きく変化する時期のため、ほとんどの方が多かれ少なかれ、何らかの症状を体験します。それがひどくなって日常生活に支障が出る状態を「更年期障害」と呼びます。
更年期障害の症状
女性ホルモンの更年期障害は、大きく分けて血管運動症状、その他の身体的症状、精神的症状の3つです。代表的なのは顔がほてる、のぼせ、冷や汗といったホットフラッシュ。手足の冷え、寝つきが悪い、息切れや動悸、めまい、肩こり、腰痛、手指のこわばりもありますね。そのような体の症状だけでなく、怒りやすくイライラする、気持ちが落ち込むといった精神的な症状もあります。
急に声を荒らげてしまい、家族や周囲にドン引きされたという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
「食事や栄養で症状を和らげることができないかな」という声も良く聞きます。女性ホルモンに似た大豆イソフラボンの摂取として豆腐などの大豆製品が推奨され、サプリメントではエクオールを摂る人も多いですね。食事で更年期をすこやかに乗り切るために、どのような食事を心がければいいのかを下記にまとめます。
更年期も基本は「バランスのよい食事」
基本は「バランスのよい食事」が一番です。私たちは「○○が体に良い」と聞けば、そればかり摂ろうとしがちですが、「○○さえ食べていればよい」というような“魔法の食べ物”はありません。
上の図は、一般的な健康な人を対象とした「食事バランスガイド」(出典:厚生労働省)で、「何を」「どれだけ」食べたらよいかの指標を図にしたものです。
1日において食べるバランスは大人も子どもも同じで「主食:副菜:主菜=3:2:1」。年齢や体格(体重)、スポーツをしているなどの特性によって多少の違いはありますが、ベースは同じです。
コマが安定して立つためには「運動」が必要という意味で最上部で人が走っており、さらに「水分」が欠かせないよとしてコマの軸が水になっており、「菓子や嗜好品」は楽しく適度にとして、小さく左端にコマを回すヒモとして描かれています。
意識して摂りたい栄養素
それを踏まえた上で、更年期にしっかり摂りたい栄養素(ビタミン)は次の通りです。
- ビタミンE
- ビタミンD
- ビタミンB6
- ビタミンB12、ビタミンB1
- ビタミンK
それぞれ説明していきましょう。
ビタミンE
ビタミンEは女性ホルモンの分泌を整え、代謝に関わるホルモンで、冷えの改善にビタミンEが処方される場合もあります。抗酸化作用もあり、「若返りのビタミン」とも呼ばれるように、老化や動脈硬化の予防も期待できるため、更年期には積極的に摂りたい栄養素です。
多く含まれる食品はアーモンドなどのナッツや魚介類、大豆製品。抗酸化力の3大ビタミンでもあり、ビタミンAやビタミンCと一緒に摂取すると、抗酸化作用がより高まります。
ビタミンD
更年期になると、エストロゲンの分泌量が減少するため、骨がスカスカになる骨粗鬆症のリスクが高まります。高齢者の転倒や骨折は寝たきりや要介護状態にもつながりやすく、著しく健康寿命を下げる結果にもなります。
「骨を丈夫にする栄養素」というと、カルシウムが思い浮かぶと思いますが、カルシウムとともに摂取したいのがビタミンDです。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨密度の低下を抑制します。最近では、ビタミンDは筋力維持に役立つとしてアスリートも積極摂取するようにもなっています。
また、ビタミンDは女性ホルモンの構造にも似ているため、ホルモンのような働きをします。更年期はビタミンDの合成も低下し、血中のビタミンD濃度が低下するため積極的に摂りたい栄養素です。
多く含む食品は、鮭をはじめとする魚介類、キクラゲなどのキノコ、卵黄などです。
ビタミンB6
ビタミンB6はエストロゲンの代謝に関わり、ホルモンバランスを整えます。赤血球の合成にも役立つため、月経前症候群(PMS)の症状をやわらげる働きがあるともいわれています。マグロやカツオなどの赤身魚やレバー、ささみ、豚ヒレ肉などの肉類、サツマイモや玄米などの精度の低い穀類、バナナなどに多く含まれています。
ビタミンB12、ビタミンB1
ビタミンB12は神経に作用し、しびれや指の強張りの改善が期待できます。ビタミンB1と共に自律神経を整えてくれるので、更年期のストレスを和らげ、精神的な症状の改善効果も期待できます。ビタミンB12は、魚や肉といった動物性食品やしじみやあさり、牡蠣などの貝類に多く含まれています。ビタミンB1は玄米、豚肉などの赤身肉類、大豆製品に多く含まれています。また、玉ねぎやにんにくに多く含まれる硫化アリル(アリシン)という成分と一緒に摂ると吸収率が良くなると言われています。
ビタミンK
ビタミンKは骨の形成に必要なビタミンで、骨にカルシウムを沈着させる働きがあり、骨粗鬆症の予防にも役立つビタミンです。特に納豆に多く、ブロッコリー、ほうれん草などの緑黄色野菜や抹茶、乾燥ワカメにも多く含まれています。
「肝油がいい」と言われる理由
とはいっても、これだけのものを意識しながら食事をとるのは大変です。それをまとめてとれる健康食品として「肝油」が注目されるようになったのです。
少し甘味があってグミのような食感の肝油は、サメやタラなどの魚類の肝臓に含まれる液体から抽出した脂肪油。ビタミンAとビタミンDが多く含まれていますが、最近ではビタミンCを添加したもの、乳酸菌やカルシウムが添加されたものや大人向けの商品も出回っているようです。
サメから抽出された肝油には、ビタミンEやDHA、EPAも含まれています。スクワレンという不飽和脂肪酸(化粧品に使われるとスクワランになる)が含まれており、免疫力や肝機能を高め、コレステロールや中性脂肪の低減、抗酸化作用もあります。
怖い過剰症、摂りすぎには注意
このような話を聞くと、自分の食生活に自信がなくなり、あれもこれもと複数のサプリメントを摂りたくなるかもしれません。肝油を買いに走りたくもなります。
しかし、栄養素の摂りすぎもよくないのです。含有成分の栄養素が重複し、気付かずに過剰摂取をし続けていたら怖いのです。
一般的に水溶性ビタミンのビタミンB群とC群は尿から排泄されてしまうので、過剰摂取による副作用はほとんど心配しなくてよいと言われていますが、むやみに長期間、ビタミンやミネラルの過剰摂取を続けると体に負担をかけることになります。
特に注意したいのがビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンで、過剰摂取による副作用が数々報告されています(厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』)。
ビタミンAでは食欲不振・悪心・嘔吐・脱毛・発疹など、ビタミンDでは食欲不振・頭痛・口の渇きの他に、血中カルシウム濃度が高くなり、腎臓や血管などにカルシウムが沈着します。 ビタミンKは下痢・悪心・嘔吐などが報告されています。
少なすぎてもダメですが、多過ぎてもダメ。何事も「バランス」が必要なのです。